会社の退職前にトラブルを起こさないために知っておきたい法律の規定
最近、会社を退職する際のトラブルが増えているそうです。辞めたくてもなかなか辞められないという労働者が増えているのです。
しかし、このような事態は法律上、問題ないのでしょうか。
ここでは、退職する際に会社とトラブルを起こさないために知っておきたい法律上の規定や退職する前に考えておきたいことなどを紹介していきます。
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目次
会社を退職する際のトラブル事例
会社の退職をめぐるトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。
まずは、事例を紹介しながら、退職時のトラブルを見ていきます。
IT企業に勤める会社員の事例
この方は勤めていたIT企業を辞めたいということで会社には退職届を提出しました。
なんとか会社は辞められたものの、その後送られてきた離職票の退職理由には「懲戒解雇」と記されていたのです。会社側は退職届を受理せず懲戒解雇という形にしていたのです。
これだと、この会社員の再就職に影響が出てしまう可能性があります。明らかにこれは会社側の嫌がらせとしか言いようがありません。
このように、IT関係や不動産関係、建築関係などの仕事において同じようなトラブルが多いとのこと。
労働相談センターの方の話によると、このような相談は年間で500件以上もあり、この2年で3倍に急増しているそうです。
では、なぜこのようなトラブルが発生するのでしょうか。
それは、長期化する景気の低迷で会社にゆとりがなくなっていることが挙げられます。できるだけ低賃金で真面目に働く労働者を確保したいと思っているのです。だから、そういう労働者を手放したくないのです。
これはまさに現代の大きな問題点と言ってもいいでしょう。
会社に退職届を出すのは法律上いつまで大丈夫か?
法律では、労働者が自分の意思で会社を辞めたいと思ったときは、自由に退職できることになっています。
ただ、自由といってもいつでも良いというわけではありません。退職届を会社に提出してから実際に退職するまでに最低でも2週間は必要です。
また、就業規則で「退職する場合は退職届を1ヶ月前までに提出すること」と記載されている場合には、それに従う必要があります。
逆に会社が無理に引き止めようとしても、これ以降は拘束できないことになります。もし無理に引き止めようとしたり、退職は認めなかったりしても、法律上は一方的に退職することは可能なのです。
退職の申し出を行う際は、退職届を提出しましょう。決して退職願で提出しないことです。退職願は退職の「お願い」をしているにすぎません。
また、退職の理由としては「一身上の都合」で大丈夫です。
有期雇用契約者の会社の退職は法律上どう定められているのか?
先ほどは正社員の場合でしたが、アルバイトやパート、契約社員などの有期雇用契約者の場合はいつでも辞められるわけではありません。
有期雇用契約の場合は、原則として契約期間中は労働契約を解約できないことになっています。解約できるのは「やむを得ない事由」がある場合だけです。
どういうことが「やむを得ない事由」にあたるのかというと、賃金が不払いだったり、本人が病気になったりケガをしてしまったり、パワハラされたりなどです。
就業環境や労働者の健康状態などを考慮してやむを得ないと判断できる場合は「やむを得ない事由」として解釈されるでしょう。
ただし、労働基準法137条により、契約期間が1年以上の労働者で、期間の初日から1年経過している場合には、この「やむを得ない事由」がなくても、いつでも退職できることになっています。
退職する会社とトラブルを起こす前に知っておきたい法律外のこと
退職するときに会社とトラブルにならないためには、事前の確認をしっかりとしておく必要があります。
また、実際にトラブルになった際にはどこに相談すべきかも知っておきましょう。
ここでは、退職する前に確認しておきたいことや知っておきたいことを紹介します。
就業規則はしっかりと確認しておく
基本的に法律では、賃金が日給制の場合は退職の申し出から2週間後、月給制の場合は月の前半に申し出れば当月の末、月の後半に申し出れば翌月末に退職できることになっています。
しかし、会社によっては就業規則のなかに「退職を希望する日の1ヶ月以上前に申し出ること」などと記載されている場合があります。この場合はこの就業規則に従わなければいけません。
したがって、事前に会社の就業規則を確認しておき、退職する際にはいつまでに退職届を出すべきか認識しておきましょう。
退職の際に会社とトラブルになった際の相談先
法律もしくは会社の就業規則にのっとり退職しようとしても、会社側から恫喝されたり、脅しをかけられたりして退職できないような事態になることがあります。
このようなトラブルが発生したときには行政機関に相談しましょう。最初の相談先は労働基準監督署です。
自分の会社を管轄している労働基準監督署に退職を認めてもらえない旨を相談すると、監督署から会社に指導が入り、改善の方向に向かうでしょう。
それでも効果がない場合は、労働基準監督署の上部機関である労働局に相談します。労働局では会社の指導に加え、専門家が労働者と会社の仲介役となり話し合いで問題を解決するようにあっせんします。
もし、これでも効果がない場合は、裁判所で法的解決をすることになります。
会社を退職する際の金銭的なことに対する法律上の規定
なかには会社を辞めるとなんらかの制裁金を支払うように合意がなされている場合があります。
例えば、在職中に受けてきた研修費用を退職時に返還するように雇用契約上定められているような場合です。
しかし、このことは法律(労働基準法16条)で禁止されています。この法律では「一定の金銭を支払うことがあらかじめ約束されていたとしてもその効力は認められない」とされているのです。
そもそも、事前に金銭を支払うことを約束していた場合、労働者は自由に退職できなくなります。労働者の退職の自由を奪っていることになります。
それは、研修費用を退職時に返還するように合意がなされていたとしても無効になる可能性があるということです。
だだ、この場合、このことが「労働者の退職の自由を奪っているか」と裁判官に評価されるかが重要になってきます。
会社を退職する前に法律以外のことで考えておきたいこと
退職届をいつまでに出せばよいかはこれまでにも書いてきたように、民法上は原則2週間前、会社の規定でも1ヶ月前です。法律的にはこの日数前に提出すれば問題ないでしょう。
しかし、会社は自分以外の人が働いています。退職することで自分がやっている仕事は他の誰かがやることになります。そこで退職する前に法律以外に考えておきたいのが業務の引き継ぎのことです。
業務の引き継ぎにかかる期間については、今までその仕事をしてきた自分がよく知っているはずです。
1ヶ月が1サイクルとなっている仕事の場合、引き継ぎを完了するのは1ヶ月かかるかもしれません。このようなことを考えて、引き継ぐ仕事によっては1ヶ月以上前に退職届を出しておく必要があるでしょう。
法律的には2週間前でもかまわないかもしれませんが、引き継ぎのことも考えて退職届を提出するようにしましょう。
実際にいつ提出するかは本人次第ですが、業務の引き継ぎにかかりそうな日数プラス1ヶ月前に提出するようにするとよいでしょう。
会社の退職前に有給休暇を消化することは法律上問題ないのか?
退職すると決めた時、残っている有給休暇も消化したいと考えるでしょう。
では、退職日前に有給休暇を取得することは法律的には問題ないのでしょうか。
それについては全く問題ありません。有給休暇は勤務している間は使える権利があるため、たまっている有給休暇を退職日までに消化することは法律上、問題ありません。
ただし、突然退職届を出し、引き継ぎもしないまま有給休暇をとることは、会社にも迷惑がかかりますし、円満退社とはならないでしょう。
有給休暇を消化するにしても、円満退社できるように余裕を持って退職届を提出しましょう。
一方、有給休暇を消化しようとした時に会社から承認されないということはないのでしょうか。
会社には、有給休暇の取得時期変更という権利があります。有給休暇を取得しようとした時に、繁忙期で人手が足りなかったり、休まれると困ったりする場合に有給休暇の時期をずらすように指示できる権利です。
これを使われることはないのでしょうか。
実は退職時にはこの権利は使えないことになっています。ですので、特にこのことで心配する必要はないでしょう。
退職の手続きについては就業規則にも記載されていますので、退職届を出す前にしっかり確認しておきましょう。
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